ベンゼン壊してキラルな5-7二環性化合物をつくる

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Asymmetric Synthesis of a 5,7-Fused Ring System Enabled by an Intramolecular Buchner Reaction with Chiral Rhodium Catalyst

Hoshi, T.; Ota, E.; Inokuma, Y.; Yamaguchi, J.
Org. Lett.. 2019, ASAP.

DOI: 10.1021/acs.orglett.9b04048

Buchner 反応はカルベン種によるベンゼン環のシクロプロパン化、続くジビニルシクロプロパン転位によってシクロヘプタトリエン骨格を与える1)。置換ベンゼンから迅速に5,7-縮環骨格を構築出来る特徴から、天然物合成に広く用いられてきた。一般に、分子内Buchner 反応ではa-ケトジアゾ化合物やα-ジアゾβ-ケトエステルといった、ジアゾ基のベンゼン環側のα位にカルボニル基をもつ特殊な基質が用いられる。ジアゾ基α位に水素原子を持つ場合には脱離が優先し、オレフィン化が進行するためである。本研究では、α-ジアゾエステルの分子内Buchner 反応を検討し、適切なロジウム二核錯体を用いることでオレフィン化によるα,β-不飽和エステルの副生を抑制できることを見いだした。また、ベンゼン環上の置換基が環化/脱離選択性に大きな影響を及ぼすことが示唆された。また、得られた生成物のエナンチオ過剰率は良好であり、ジアゾ基α位に水素原子をもつ化合物では初めての例である。

山口研究室の「スター」待望の第一報目。合成はまだ届きませんでしたが、古くからある脱芳香族化反応を利用して5-7員環をつくりました。いまいち収率や選択性が伸び悩んでいましたが、ある基質に限って抜群によいことが判明。さらに、不斉収率を測定するとかなり高いことも発覚。合成してからでも良かったのですが、結構時間がかかりそうだったのでここで区切りとしました。サポートしてくれた太田くんも実はうちに来てはじめての共著です。絶対立体配置決定のためのX線結晶構造解析は北大の猪熊さんに手伝ってもらいました。最終的には有機合成化学的にはとっても面白い論文になったと思います。写真はあんまり笑ってませんが、まだまだ全く満足していないということなんでしょう!とりあえず、おめでとう!

山口潤一郎

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