革新的分子を創る

開発した触媒は既に機能が約束された分子群、例えば医薬品候補分子や天然有機化合物の合成に利用します。それだけでなく未知の機能分子の創製やその機能解明にも挑戦し、全く新しい機能分子を創ることが最終的な目標です。

 

現在の研究例(着手中)

多様な複雑チオペプチド抗生物質の高効率合成

チオペプチド抗生物質群は現在急速に注目を集めているグラム陽性菌のタンパク質合成阻害剤です。例えばNovartis社はチオペプチド抗生物質GE2270類(1)をリード化合物とした半合成誘導体LFF571(2)を開発し、現在臨床試験(Phase II)中です。また、チオペプチド抗生物質のなかでも、ノシヘプチド(3)は二環式の環状ペプチド構造を有し、最も複雑構造をもっています。構造的特徴としてはアゾール環(チアゾール、オキサゾール)を置換基としたトリアリールピリジン骨格を含む大環状ペプチド構造を有しており、誘導体は50種類以上存在する極めてユニークな化合物群です。

このような背景により、半合成では困難なチオペプチド抗生物質群の主骨格の効率的合成法の確立が求められています。これまで主骨格である多置換ピリジン部位の構築は、付加環化反応によるピリジン合成や有機金属化合物と有機ハロゲン化物のクロスカップリング反応によって行われていました。しかしながら、いずれの合成法においても多段階を要する前駆体の調製を必要とし、多様性のある誘導体を合成するために、3つのアリール基を自在に変換可能な新しい多置換ピリジン骨格構築法が望まれています。また、環状ペプチドの結合形成には一般的な縮合反応が用いられ、反応が低収率または進行しないこともあります。

そこで本研究では、中分子化合物複雑チオペプチド抗生物質の多様性合成を目指し、新規トリアリールピリジン合成と、2つの化学ライゲーション法を駆使したペプチド部位の迅速合成法を確立することを目的とします。また、最難関中分子チオペプチド抗生物質ノシヘプチド(分子量1221)の合成に着手します。

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新規生物時計制御分子の開発とケミカルバイオロジー研究

 生物時計は睡眠や覚醒といった約一日の周期をもつ概日リズムを高度に制御する仕組みであり、私達が生活するうえで大変重要です。生物時計のしくみを理解しようとする試みは、動物ならば、その機能障害に由来する精神疾患の治療薬の開発に、植物なら開花や結実の制御に大きく寄与することから、世界中で盛んに行われています。最近、その生物時計を制御するために、生物時計を構成する時計遺伝子から作られる時計タンパク質に作用する分子を利用する手法が注目を集めています。しかし、現在これらの分子を発見する方法は市販の化合物ライブラリからのランダムスクリーニング法しかなく、化学の力で分子をデザイン・修飾し、それを基に新たな生物時計分子を創製することが求められています。私達はごく最近、ある植物の概日リズムを長周期化する分子を発見しました。この分子を最新の合成化学の技術を駆使して、誘導化し、新しい生物時計制御分子の開発を目指しています。さらに、その分子を用いて如何にして生物時計を制御しているのか化学と生物学的なアプローチにより解明したいと考えています。名古屋で化学と生物学が融合した研究室を起ち上げ、合成化学を専門とする私と、生物時計の第一人者が同研究室に属するという環境を整ったことではじまった学際的研究です。生物時計を分子で自在に操ることを究極の目標とし、本研究に注力したいと考えています。

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