Cephalotaxusアルカロイドの超短工程合成

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Concise Synthesis of (±)Fortuneicyclidins and (±)Cephalotine B Enabled by PdCatalyzed Dearomative Spirocyclization

Uwabe, Y.; Muto K.; Yamaguchi, J.
Chem. Eur. J. 2023, accepted articles
DOI: 10.1002/chem.202302769

イヌガヤから単離されたCephalotaxusアルカロイド、fortuneicyclidins A and Bとcephalotine Bの短工程合成に成功した。Cephalotaxusアルカロイドはテトラヒドロベンズアゼピンとアザスピロ環からなるユニークな骨格をもち、多くの合成化学者の興味を引いてきた天然物である。そのなかで、fortuneicyclidinsとcephalotinesは、C11位の酸化に伴い、より高度に縮環した構造をもつ合成難度の高い標的分子である。今回我々は、以前報告したアザスピロ環化を用いてfortuneicyclidins A and B、cephalotine Bの短工程合成を達成した。開発したアザスピロ環化に加え、その後のタンデム反応、二種類の触媒的ヒドロシリル化等を駆使し、これら天然物を8–9工程で合成した。

上部くん (2023年修士卒) 一人でやり遂げた天然物合成の論文です。我々の開発した脱芳香族的アザスピロ環化反応を使うと、cephalotaxusアルカロイドが短工程で作れます、ということを明確に示すことができました。僕個人としては、自身で立案した初めての全合成テーマで、開始当初不安のほうが大きい状態でした。上部くんの高い生産性と考察力もあって、不安を吹き飛ばし最後まで登り詰めることができました。ある程度ルートが固まったときにも、「少しでも短工程化を」と意識し、我々のアザスピロ環化と見いだしたタンデム反応を鍵とすることはもちろん、可能な限り保護脱保護しない、ワンポットで行けるならワンポットでやろう、とこだわった結果、8-9工程で全合成完了できました。

修論執筆中でも手を止めず、「合成研究」の題目で申し込みした年会で「全合成しました」と言おう、と意気込み、最後まで駆け抜けました。論文化プロセスではいろいろあって苦汁をなめましたが、最終的にChem Eur JでVery Importantの評価を複数人からいただくことができました。個人的な話にはなりますが、全8-9工程それぞれに思い出が詰まったかけがえのない論文です。おめでとう、上部!

武藤 慶

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