新規トリアゾリリデン配位子の開発

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Synthesis and Properties of Pyridine-Fused Triazolylidene–Palladium: Catalyst for Cross-Coupling Using Chloroarenes and Nitroarenes
Keiichiro Iizumi, Keito P. Nakayama, Kenta Kato, Kei Muto, and Junichiro Yamaguchi
J. Org. Chem. 2022, ASAP.
DOI: 10.1021/acs.joc.2c01562

新奇カルベン配位子として、ピリジン縮環したトリアゾリリデン(PyTz)配位子を開発した。本配位子をもつ各種金属錯体を合成し、その物理的性質の調査の結果、本配位子が高い電子供与性をもつことがわかった。Pd–PyTz錯体を合成し、それを用いてクロスカップリング反応の触媒活性を評価したところ、クロロアレーンやニトロアレーンとアリールボロン酸との鈴木宮浦カップリングが進行した。このように、C–Cl結合、C–NO2結合の切断を伴うカップリング反応に効果的な新奇カルベン配位子を創出できた。

ようやくでました、新規カルベン配位子合成。これまで類似論文はない完全に新規テーマです。飯泉の2報目。実はこのテーマは名古屋時代にさかのぼり、クリックで簡単に作れるトリアゾリリデンでカルベンをつくり、その不安定性を二座配位子で補って、なんでも酸化的付加が可能な新規触媒をつくろうというテーマでした。なかなか進まなかったのですが、早稲田に来て2期生の中山くんにもう一度リスタートしてもらいました。実際にできたのですが、なかなか触媒活性があがらない。なんとかまとめようとしたのですが、そもそも中山くんが研究を始めてから同じような二座配位子が山のように報告されることとなったのです。というわけでものすごい新規性も見いだせずお蔵入り状態でした。そのときに安定性問題を解決しようと武藤くんが提案してくれたのが現在のピリジン縮環型トリアゾリリデン。合成も簡単で、なんとか優れた触媒活性を出すことができました。芳香族ニトロ化合物のC–NO2結合の活性化に使えたのは特によかったですね。この反応は2種類の触媒系しか全く反応が進行しないことが知られていたので、それらに比べて触媒活性は低いものの満足です。カトケンのX線結晶構造解析で研究も加速されました。

と紆余曲折ありましたが、堅い仕事をまとめられてよかったです。飯泉はなかなか苦労して、努力家というよいところが薄れた時期もありましたが、ギリギリ腐らず(ほぼ腐ってましたが)進めたおかげで最近かなり面白い反応を見つけました。カルベン錯体研究も新たなステージに入り、来年は飯泉の年になるかもしれません。おめでとう!

山口潤一郎

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