芳香族エステルと有機リン化合物との触媒的脱酸素型カップリング

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Catalytic Deoxygenative Coupling of Aromatic Esters with Organophosphorus Compounds
Kurosawa, M. B.; Isshiki, R.; Muto, K.; Yamaguchi, J.
J. Am. Chem. Soc. 2020, Just accepted.
DOI 10.1021/jacs.0c02839

芳香族エステルは安価で入手容易な化合物であり、近年これらを用いた新規触媒的反応開発研究が精力的に行われている。例えば、芳香族エステルをアリール化剤として用いる脱カルボニル型カップリングや、脱カルボニルを伴わずに芳香族エステルをケトンやアミドなどに変換するカップリング反応が報告されている。

当研究室では以前、ニッケル触媒存在下、芳香族エステルを用いた、有機リン化合物との脱カルボニル型C−P結合形成反応を開発した。この反応では芳香族エステルがアリール化剤として機能し、対応する芳香族リン化合物が得られる。一方、今回我々は、用いる金属触媒をパラジウムへと変えることで、芳香族エステルがベンジル化剤としてはたらき、ベンジルリン化合物が得られることを見いだした。本反応は、パラジウムと電子豊富なホスフィン配位子をあわせ用い、添加剤としてギ酸ナトリウムを用いることで効率的に進行する。ヘテロ環を含む、種々の芳香族エステルが本反応に適用可能である。

ついに出ました、修士2年BB(バブル)第一報目、博士2年一色7〜8報目(わからん)。反応は一色が既報の脱カルボニル型炭素–リン反応の開発の際に見つけた副反応から始まりました。当時、与えたテーマがうまく行かず露頭に迷っていた4年生、BBにお願いして検討してもらったところ、かなりの一般性があることがわかりました。ただメカニズムがわからない。

夏に行った有機反応若手の会で、反応機構に関して、東北大の寺田先生に提案され、他の学会でも叱咤激励され、BBはそこから加速しました。もう一度、反応条件をブラッシュアップ、より様々な化合物で試し、反応機構解明研究も行いました。

彼女は同時に様々なプロジェクトに関わっていたため、いつも深夜まで実験。査読は全員OKで、完勝と思いきや、多くの追加実験が必要でした。研究室完全閉鎖直前のリビジョンもこの時期に大変でしたが、彼女はほぼ徹夜状態でなんとか乗り切りました(ChemRevとの違いをみるとわかります)。久々のJACSなのでぼくも嬉しいです。上の写真は研究室が完全閉鎖状態なので著者全員でZoomを使って撮りました。

BB、博士進学しますので皆さんよろしく!おめでとう!

山口潤一郎

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