ジルコノセンと可視光レドックス触媒によるアルキルクロリドのC–Cl結合開裂反応

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Chlorine Atom Transfer of Unactivated Alkyl Chlorides Enabled by Zirconocene and Photoredox Catalysis

Toshimasa Okita, Kazuhiro Aida, Keisuke Tanaka, Eisuke Ota, and Junichiro Yamaguchi Precis. Chem. 2023, ASAP.

DOI: 10.1021/prechem.2c00002

ジルコノセンと可視光レドックス触媒を利用したアルキルクロリドの水素化/ホウ素化反応を開発した。ラジカル反応において、アルキルブロミドやアルキルヨージドは炭素ラジカル前駆体として汎用される。一方、アルキルクロリドはC–Cl結合の結合解離エネルギーが高く、均等開裂によって炭素ラジカルを生成することは容易ではない。古典的なアルキルクロリドのハロゲン原子移動反応は、α-クロロカルボニル化合物やアリル/ベンジルクロリドなどの”活性な”アルキルクロリドを対象とするものが大半であった。今回、本触媒系を利用することで、CCl結合のBDEが比較的高い不活性なアルキルクロリドから、炭素ラジカルを生成することに成功した。本反応は、天然物誘導体や医薬品を含む、広範なアルキルクロリドを水素化、ホウ素化することが可能である。

 ジルコノセン/可視光レドックス触媒系の第二弾。プレプリントを出したのは去年5月ですが、色々なジャーナルにはねられ続けアクセプトまでかなり時間かかりました。研究をなかなか理解してもらえず、悔しくて途中で思い切ってイントロを1から書き直し、最終的には、Precision Chemistryという新しいACS Journalの創刊号に採択して頂きました。筆頭著者の大北は当ラボの一期生。遷移金属触媒反応に長く従事していた彼ですが、当時M1とB4しかいなかった光反応グループにD2の秋から参画し、プロジェクトを大きく前進させてくれました。黙々と実験し、背中で語る姿勢に後輩達も大きな刺激をもらったはず。アルキルクロリドの水素化は田中啓介の最初のテーマで、最初からかなり高い収率で生成物が取れてました。ただ、塩素を水素に変えるだけでは分子の価値を下げているだけと言われそうなので、官能基化をどうしても入れたかった。そして、大北がボリル化を完遂してくれました。卒業に1年近く間に合わなかったけど、ACS Editors’ Choiceにも選出してもらい、なんとか良い形で世に出せたと思ってます。後続研究も現在進行中で、共同第二著者の田中君がその一部を今年の年会で発表予定です!乞うご期待ください。ちなみに大北は卒業、会田は留学中で、今ラボにいる学生は田中君だけでしたが、写真を送ってもらい全員集合しました。おめでとう!!

太田英介

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