ヤマタノオロチ分子:オクタアリールナフタレン・アントラセンの合成

Today:0views / Total:4,302views

Synthesis of Octaaryl Naphthalenes and Anthracenes with Different Substituents
Suzuki, S.; Itami, K.; Yamaguchi, J.
Angew. Chem., Int. Ed. 2017, 56, 15010-15013. DOI: 10.1002/anie.201709332

多種類のアリール基で置換されたナフタレン、アントラセンの自在合成を達成した。テトラアリールチオフェンオキシドとアラインとの [4+2]付加環化反応を用いることでオクタアリールナフタレン、オクタアリールアントラセン、デカアリールアントラセンを合成した。本手法に従えば、チオフェンに導入するアリール基の種類を変えることで、ナフタレン、アントラセンの望みの位置にアリール基が導入可能となる。

 ベンゼンに6つ、ピリジンに5つ異なる芳香環を導入可能な手法(全置換芳香族化合物の合成法)を既に開発しています。その続報で、今回対象としたのはベンゼン環が2つ、3つのナフタレン・アントラセン。それらの水素を全部芳香環に変えてしまおうという研究。

最終的に導入する芳香環の数を8個に固定して、8個アリール基を導入したオクタリールナフタレン、オクタアリールアントラセンを合成しました。全部導入したベンゼン環の種類が違うんですよ。つまり、どんなアリール基でも自在に導入できるということ。何に役に立つって?そんなものはしりません。芳香族化合物の多様性を大幅に拡大させることのできることが利点ですが、極めて合成化学者のものづくり欲求に特化した研究です。もっと簡単にいえば、こんな分子つくれたらカッコよくないですか?

こんな「ヤマタノオロチ分子」を作ってくれたのは、前職の名古屋大学で研究を行っている、鈴木真くん(博士課程3年)。彼は目的分子にアクセスする合成能力が非常に高く、いつも楽しんでかっこいい分子を合成しています。鈴木くんのように、こういう研究が楽しい!と思える学生と一緒に仕事ができたらと思います。

山口潤一郎

ページ上部へ戻る