環を壊してフッ素をいれる

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Ring-Opening Fluorination of Bicyclic Azaarenes.

Komatsuda, M.; Suto, A.; Kondo Jr., H.; Takada, H.; Kato, K.; Saito, B.; Yamaguchi, J.

Chem.Sci. 2022, Just Accepted.

DOI: 10.1039/d1sc06273e

ピラゾロ[1,5-a]ピリジンをはじめとする二環式アザアレーンの開環型フッ素化を開発した。求電子的フッ素化剤を作用させることで、芳香環の求電子的フッ素化と続く脱プロトン化により、ピラゾール環が開環し対応するフッ素化体を与える。電子供与基や電子求引基など様々な官能基を有する二環式アザアレーンが適用可能であった。得られた開環型フッ素化体の誘導体化により多様な含フッ素化合物の合成も達成した。さらに、中程度のエナンチオ過剰率ではあるが、本反応の不斉化にも成功した。

研究室初のフッ素化反応でました。小松田・須藤・近藤の研究成果です。

当研究室では武田薬品と共同研究を盛んに進めていますが、あるときのディカッションでフッ素化すると環がひらいた化合物がとれてしまうんですよ。というお話を聞きました。それは逆に面白いということで反応開発をしてみることにしました。

その結果、非常に単純な条件ですが、本反応の最適条件を見いだし、共同研究として論文化することができました。同社とはたくさんの共同研究を行っていますが、ほとんどがオンデマンド研究であるため、創薬研究の最前線に携わることができるものの、なかなか結果を公表することはできません。そういった意味でも今回の論文発表は密接な共同研究の証として良い機会となりました。

実はJ誌とA誌に投稿したのですが、エディターリジェクトを食らい全く審査してもらえませんでした。そこでChemical Science誌に投稿したところ、はじめて査読にまわり、全レビューワーの賛辞とともに、即座に掲載されました(リビジョン提出から数時間でのオンライン掲載は爆速でした。)。特にA誌はエディターが全く読んでないと思われます。過去にあった事件から、テコ入れに失敗し、編集部や掲載論文の質が明らかに低下しほぼド素人が判定しています。非常に不当ですし、雑誌の将来がみえないので、A誌は今後金輪際投稿も査読もしないことを決めました。

話がそれましたが、第一著者の小松田くんはこれまで携わってきた脱芳香族的官能基化反応からテーマをガラッと変更させ今回の研究成果に導いてくれました。ちょうど博士論文の事前公聴会の前日にアクセプトされてなんとかまにあいました。製薬会社への就職が決まっていますが、自信をもって輩出できる超優秀な学生の一人だと思います。おめでとう!

山口潤一郎

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