アリール(亀の甲)ダンス反応

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Aryl Dance Reaction of Arylbenzoheteroles
Nakahara, H; Yamaguchi, J.
Org. Lett. 2022, ASAP.
DOI 10.1021/acs.orglett.2c03442

芳香環上の置換基の結合位置を移動させる芳香族置換基移動反応はあまり知られていない。最近、当研究室ではPd/dcypt触媒を用いた芳香族エステルの芳香環上エステル移動反応(エステルダンス)を開発した。多様な芳香族アリールエステルに対して、芳香環上におけるエステル部位の1,2-移動が進行し、対応する構造異性体が得られる。一方、芳香環上でアリール基を移動させるアリール転位反応(アリールダンス)がある。このアリール転位反応の先駆的な例として、Kostらによるアリールインドールの異性化反応が知られている。β-アリールインドールに対し化学量論量の酸を反応させることでアリール転位反応が進行しα-アリールインドールが得られる。本反応はWheland中間体を経由して進行すると述べられている。アリール転位反応は医農薬や有機材料などの有用化合物に頻出する重要骨格であるビアリール化合物の自在な合成を可能にするが、未だ報告例が少ない。そこで本研究では、アリールダンスのより広範な官能基・化合物への適用を目指した。その結果、ルイス酸を用いることでアリールヘテロールのアリールダンスを開発することに成功した。β位にアリール基をもつヘテロールに塩化アルミニウムを作用させることでアリール基の1,2-転位が進行し、α-アリールヘテロールを与える。ベンゾチオフェンやチオフェン、インドールなど様々な芳香族複素環化合物に適用できる。また、本反応はヘテロール上に適切な置換基を導入することで、α位からβ位へのアリールダンス反応も可能にした。本手法を用いることで、アリールヘテロールの自在な骨格の変換が可能になる。

ダンス反応第二弾!エステルダンスに続いてアリールダンス反応です。エステルダンスが先行例ゼロに対して、このアリールダンスは結構古くから知られている反応でした。ただ、体系的な報告もなく、ヘテロール系の場合ほとんどがC3からC2位への移動でした。どうにかして、ダンス(もとに戻す)してくれないか、できれば触媒でと始めたのが中原くんのこのテーマ。すぐに結果はでましたが、なかなか新規性を見いだすことはできず。いろいろとやっていると置換基を変えるとC2位からC3位に転位することを発見してくれました。つまりC3位のものからC2位にして、C2位をC3位に戻すことができます。化合物には制限がありますが、純粋にこれをしたかったんで、個人的にはかなり満足です。論文化には少し苦労しましたが、最終的にはすぐにOLにアクセプトされました。中原くん第1報目。彼は今別のテーマも進めてますが、また遷移金属触媒なし。独自路線を突き進んでいます。おめでとう!

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