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蚊 vs シリコンオイル

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お久しぶりです、修士1年の飯泉です。
研究室内で生活していることが多い自分は外の気候には疎いですが、最近はさすがに寒くなってきたなと思います。
こんなにも寒いともう冬だなーって感じますが、今回は季節外れな内容で身近な科学について書こうと決めました。

”Mosquito repellence induced by tarsal contact with hydrophobic liquids”

”蚊の足が忌避する疎水性液体が虫除け効果を示す”という内容でちょっと前にニュースでも取り上げられていました。
これは、 花王株式会社 パーソナルヘルスケア研究所・マテリアルサイエンス研究所が明らかにした[蚊の嫌う肌表面をつくり、蚊に刺されることを防ぐ技術]を開発したという論文です1。自分はYouTubeに上がっている動画ではじめてこの技術について知ったのですが、どうしてシリコンオイル(疎水性液体)が蚊の吸血を防ぐことができるのだろうと興味を持ちました。

https://www.youtube.com/watch?v=5CxG0gxOc_4&feature=emb

画像引用: https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000200876.html

昔から知られている一般的な蚊除け
みなさんも高い頻度で使用していると思いますが、一般的には蚊の嗅覚に影響を与える虫よけスプレーが知られています。スプレーに含まれるDEET(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)という成分が関与しているらしいです。詳しいメカニズムはまだ分かっていないですが、ヒトの臭いを覆い隠してしまう、蚊の嗅覚システムを妨害してしまう、もしくは蚊が単純に嫌いな臭いであるということが影響していると考えられています2

画像引用: https://tokubai.co.jp/news/articles/1627

今回報告された蚊よけの方法
今回は、今までの手法とは異なり蚊の足に着目されています。
論文によると蚊の吸血は、肌に着地→足で態勢の安定化→吸血という動作順序で成り立っています。
そのため肌に予めシリコンオイルを塗っておくことで、蚊は肌に着地できるものの態勢を整えられずすぐに飛び立ってしまいます。蚊自身はそこに人間の肌があることを認識しているのにも関わらず、吸血できないというジレンマがとても面白いなと思いました。また蚊に吸血をさせないという課題を、に肌に着地後すぐに飛び立たせるという、今までとは異なる角度からの手段(作用機序)で解決するという発想がとても素晴らしいと思いました。

では、

どうしてシリコンオイルが塗ってあると蚊はすぐに飛び立ってしまうのか、、、
その理由は、蚊が肌に着地したと同時にシリコンオイルが蚊の足に濡れ広がるためです。この”濡れ現象”と言われる現象は表面張力による引力が蚊の足に発生することで、蚊はシリコンオイルに足を引き込まれていると判断してすぐに飛び立ってしまうのです。

シリコンオイルが水やグリセリンと比較して強い引力が発生するのは、疎水性が高いためです。蚊の足は微細構造で撥水性を示し、水など粘度の高い液体では濡れ現象は発生しません。しかし疎水性の高いシリコンオイルのような低粘度液体では濡れ現象が発生します。

蚊がすぐ飛び立ってしまう現象は、実際にハイスピードカメラによる撮影で統計が取られています(詳細は[1]の論文参照)

シリコンオイルのような効果は自然界にも存在する
この現象は赤い体液で有名なカバの汗に類似しています。
カバの汗もシリコンオイル同様の効果を示すことがわかっています。

科学者が発見することの多くは、自然界でも応用されていることが多々あり、まだまだ発見されてないことがたくさんありそうだなって思いました。

興味を持った方はぜひ論文を読んでみてください!

ありがとうございました。

[1] Iikura, H., Takizawa, H., Ozawa, S., Nakagawa, T., Matsui, Y., Nambu, H. Mosquito repellence induced by tarsal contact with hydrophobic liquids. Sci. Rep. 10, 14480 (2020).
https://doi.org/10.1038/s41598-020-71406-y

https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201209-003/

[2] http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/103/mgzn10308.html

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飯泉慶一朗

あだ名はツジョン C10H16Oのモノテルペン リキュールの一種であるアブサンの成分、苦味料 由来;ツジョンを発注してしまった(苦笑)

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